ハンドボールにおける積極的及び予測的防御の特徴(原著論文)

松木優也(福岡大学スポーツ科学部)
會田 宏(筑波大学体育系)

論文概要:本研究の目的は,国内トップレベルの男子大学生の試合を対象に,セットディフェンス局面での積極的,予測的防御を分類し,分類された積極的,予測的防御と個人の防御行動及び攻撃の行動との関連を明らかにすることで,積極的防御及び予測的防御の特徴を示すことであった.研究の結果,(1)防御の積極性は,個人のボールマンに対する防御行動と深い関係があり,防御の予測性は,ボールマンに対する防御行動に加えて,レシーバーに対する防御行動とも深い関係があること,(2)攻撃側を単発的なシュートへと導くために,積極的あるいは予測的に防御を行っていく場合,個々人の積極的防御行動,予測的防御行動を,グループ戦術やチーム戦術の中で効果的に行っていかなくてはならないことが示唆された.
(受付日:2012年7月2日,受理日:2012年8月27日)

ハンドボールにおける基本プレイ・アルゴリズム構築に関する研究:攻撃方向の切換方法におけるパーツ・プレイの構築(実践研究)

清水宣雄(国際武道大学体育学部)
東 俊介(大崎電気工業株式会社)

論文概要:本研究の目的は,ハンドボールにおける基本プレイ・アルゴリズムを構築することであった.先行研究において,戦術的プレイはアセンブリ・プレイから構成され,アセンブリ・プレイはユニット・プレイから構成され,ユニット・プレイはパーツ・プレイから構成され,最も基本的なプレイがユニット・プレイであること明らかにした.本研究においては,プレイヤーが攻撃方向を切換る際のパーツ・プレイを分析した.その結果,7種類に分類・定義することができた.すなわち,THROUGH,CROSS,WALL,PARALLEL,COUNTER,HOLD,REVERSEである.これらの用語を組み合わせることで,実際のプレイを説明することができるので,プレイの共通認識を確認する方法として有用であると考えられる.
(受付日:2012年8月4日,受理日:2012年9月25日)

卓越したセンタープレーヤーにおける1:1の突破に関する動きのコツ(実践研究)

會田 宏(筑波大学体育系)
冨本栄次(郡山女子大学家政学部食物栄養学科)

論文概要:本論では,国際レベルで活躍した1名の卓越したセンタープレーヤーの獲得した,1:1の突破に関する動きのコツをインタビュー調査し,その内容を実践現場に有用な知見として提供することを目的とした.調査内容を分析した結果,対象者は1:1の突破場面において,ステップフェイント,キャッチングフェイント,スイングフェイント,ローリングフェイントの4つのフェイントを,状況に合わせて即興的に使い分けていたことが明らかになった.また,1:1の突破における個人戦術力の養成では,長期的には,変化する状況に自由自在に対応して動ける能力を身につけさせることが目標になることが示唆された.
(受付日:2012年9月19日,受理日:2012年10月16日)

暑熱環境下におけるハンドボール試合中の水分摂取に関する研究(研究資料)

明石光史(大阪経済大学人間科学部)
後藤慶大(福岡大学スポーツ科学部)
松木優也(福岡大学スポーツ科学部)
田中 守(福岡大学スポーツ科学部)

論文概要:本研究では,暑熱下において模擬試合を実施し,水分摂取量とパフォーマンスの一指標である移動距離やポジション特性との関係について検討し,以下の内容が示唆された.(1)暑熱下の試合では発汗によって体重が減少し,多くの選手のパフォーマンス低下が考えられた.(2)試合後半においては,移動距離に伴った水分摂取量を確保する必要性が示唆された.(3)発汗量は個人によって変わってくることから,個人の水分脱水量に対して高い水分摂取率を確保する必要性が示唆された.(4)給水場所から遠いディフェンスポジションは,水分摂取量,回数共に少なくなり,選手自身もその不便さを感じていた.しかし,果敢に水分摂取のタイミングを計ることで,摂取量,回数共に向上させることも可能であると考えられた.
(受付日:2012年7月27日,受理日:2012年9月10日)

ハンガリーにおけるハンドボールの一貫指導システム:7歳から12歳までの指導プログラムに着目して(研究資料)

ネメシュ ローランド(筑波大学スポーツR&Dコア)
會田 宏(筑波大学体育系)

論文概要:本論では,ハンドボール国際ランキングで5位にあるハンガリーにおけるハンドボールの一貫指導プログラムの中から,日本の小学校やスポーツ少年団に参考になる7歳から12歳に関するプログラム内容を紹介した.このプログラムは,世界で通用している選手育成プログラムであり,日本と同様に人格の形成にも重点を置いている.これは,日本における指導者が練習の目的,手段,方法を立案する際に有用な知見となろう.今後,日本のハンドボールが世界に通用するようになるにはさまざまな課題がある.まずは,7歳から12歳の年齢カテゴリーにおいて,試合で結果を残すより,将来ハンドボール選手として活躍できるような人材を育成する必要があると考えられる.
(受付日:2012年8月28日,受理日:2012年9月13日)

ハンドボールにおける高校時代の練習時間の実態に関する研究:男女差および競技レベル差に着目して(研究資料)

藤本 元(筑波大学体育系)
山田永子(筑波大学体育系)

論文概要:本研究では,ハンドボール競技を行う高校生の練習時間の実態を明らかにし,高校生の指導をする上での基礎的な資料を得ることを目的とした.関西学生ハンドボール連盟に所属する女子競技者88名と男子競技者117名の計207名を対象にアンケート調査を行った.得られたデータを男女別に比較した結果,通常学期において,男子は女子に比べて定期的な休みの日数が多いが,練習時間に差がないこと,夏休みおよび冬休みにおいて,女子は男子に比べて総練習時間が長く,特に夏休みにおいて長いことが明らかになった.また,競技レベル別に比較した結果,通常学期において,女子および男子いずれにおいても,高いレベルのチームは低いレベルのチームに比べて練習日数が多く,練習時間が長いこと,夏休みにおいて,女子および男子いずれにおいても,高いレベルチームはレベルの低いチームに比べて総練習時間が長く,さらに女子においてその傾向は顕著であることが明らかになった.
(受付日:2012年9月21日,受理日:2012年11月1日)

退場時の数的不利の状況における攻撃は,現代のハンドボールでますます重要になってきている(翻訳)

ネメシュ ローランド(筑波大学スポーツR&Dコア)
和田 拓(筑波大学人間総合科学研究科博士前期課程体育学専攻)
中原麻衣子(筑波大学人間総合科学研究科博士前期課程体育学専攻)

論文概要:本論は,ヨーロッパハンドボール連盟(EHF)のウェブサイトに掲載されている論文「The game in numerical inferiority situations(Attacks in 5:6 inferiority situations are becoming more and more decisive in modern handball)」(Seco,2008)の翻訳である.この論文の筆者は,1990年代スペイン男子代表チームの監督として成果を収めた,Juan De Dios Román Seco 氏である.この論文の特徴は,退場時の一人少ない状況における5:6の攻撃において得点するための戦術的なガイドラインと具体的な事例を示している点にある.
(受付日:2012年9月7日,受理日:2012年9月20日)

セットオフェンスのデザイン(翻訳)

井上元輝(筑波大学人間総合科学研究科博士前期課程体育学専攻)
田代智紀(筑波大学人間総合科学研究科博士前期課程体育学専攻)
永野翔大(筑波大学体育専門学群研究生)
楠本祐平(筑波大学体育専門学群研究生)
仙波慎平(筑波大学体育専門学群研究生)
會田 宏(筑波大学体育系)

論文概要:本論は,ヨーロッパハンドボール連盟(EHF)のウェブサイトに掲載されている論文「Set-offence design」の翻訳である.この論文の筆者は,スペイン人コーチのF. M. A. Moreno氏である.筆者は,この論文において,セットオフェンスの組み立て方について述べており,3:3がセットオフェンスを組み立てる際の重要な1つのユニットだと考えている.1つのきっかけからの様々な攻め方やポストの位置に応じた攻め方など戦術的な原則についても述べている.
(受付日:2012年9月25日,受理日:2012年11月5日)