設立の趣旨

昨年(平成23年)8月「スポーツ基本法」が施行されました.これは50年前に制定された「スポーツ振興法」が全面改正されたものです.「スポーツ基本法」では「スポーツは世界共通の人類の文化である」と明記され,「スポーツ立国」を実現するという決意が述べられています.また,トップアスリートへの支援と地域スポーツの活性化がスポーツ振興の両輪として位置づけられています.こうした我が国のスポーツ界の大きな変化の中,ハンドボール界においても,ハンドボールを文化として学び,その価値を高め,次の世代に伝承していくことが求められています.ハンドボールに関わる私たちは「スポーツ基本法」の理念のもと,日本代表チームを頂点とした競技力向上を支援する活動と幼少期から高齢期までのさまざまな人々がハンドボールを楽しめる環境を整備する活動に努めなければなりません.

現在,ハンドボールの指導,普及について議論する場としては,「ハンドボールコーチング研究会」と「ハンドボール研究集会」があります.これらはいずれも(財)日本ハンドボール協会の活動であり,前者は競技力を高めるための道筋を見出す大学教員を中心に,後者は学校体育における運動教材としてのハンドボールを研究実践する小学校教員を中心に行われています.しかし我が国にはこの他に,ハンドボールの普及発展のための力強い人材が数多くいます.それは,ハンドボールに関する科学的研究に携わる研究者,コーチング,トレーニング,レフェリングに携わる指導者,実践者の方々です.そこでこの度,これまでの研究会の枠組みを超え,研究者,指導者,実践者が一同に会し,活発な議論が行える場として,新しく日本ハンドボール学会を設立することにしました.その目的は「ハンドボールに関する科学的研究及びハンドボールに携わる研究者,指導者,実践者相互の交流を促進し,ハンドボールの普及発展に寄与する知を創造すること」です.

日本ハンドボール学会では2つの知を創造し,体系化していきたいと考えています.1つは理論知と呼ばれ,主に自然科学的方法や人文・社会科学的方法を用いて明らかにされる知です.そこではハンドボールにおけるゲームやプレーの構造,トレーニング内容や方法の有効性などが明らかにされます.もう1つは実践知と呼ばれ,身体的訓練において初めて習得される行為とともにある知です.これは,現場に生きる選手,指導者,レフェリー,トレーナーたちが自らの実践活動を振り返り,記述することを通して示されます.

知を創造し,体系化するという営みは,今行われている実践活動の目的や意味を明らかにし,これからの方向性を示すことに繋がります.それと同時に,現在認められているコーチング,トレーニングなどの価値や枠組み自体を疑う行為にもなり得ます.日本ハンドボール学会では,ハンドボールを普及発展させるための問題意識を持ち続け,実践に役立つ知を創造していきたいと考えています.

平成 24 年 5 月 1 日
日本ハンドボール学会 設立準備委員会